シンオウ考察の切れ端

 2021年2月27日、昔のシンオウを舞台にした新作ゲーム「ポケモンLEGENDS」が発表されました。1つの記事にするほどではないネタがいくつか浮かんできたので、考察の切れ端を集めたページを作っておこうと思います。
 過去のネタについてもぼちぼち再考察していく予定。

「シンオウむかしばなし」は誰が書いたのか

 ミオシティの図書館ではいくつかの昔話や神話を読むことが出来るが、あれらの本を書いたのはそもそも誰なのだろうか?という疑問である。結論から言うと、「外から来た人々が、各地の伝聞をまとめたもの」の可能性が高い、というよりほぼそうだろうと考えている。

 そもそも論として、その地で生きる人々が自分達の生活様式や信仰を書き記すことは稀である。誰もが当たり前に知っていることなので記録する必要が無いのだ。なので、外の人々がその土地の人となりを知り、記録するために伝承を聞いて記した…という過程のはずだ。(この辺りを鑑みると、やはりプレートの存在は異質に見える)

 この説を補強する要素の一つとして、図書館がミオシティにあることが挙げられる。
 ミオシティはかつて海運が盛んだったらしい。現代でも船は出ているが、他の街に行く船は無い。ということは、他所から来た船を迎え入れる場所だったのではないか。自然と別の土地から来た人が集まり、それゆえにシンオウ地方の伝承を集めた資料が多く残ったのではないだろうか。
 また、「シンオウしんわ」に数か所見られる「???」も、伝聞ゆえに生じた記述とすれば辻褄が合う。聞き手の文化に該当する単語が無かったか、話し手の記憶が薄れていたか、あるいは複写の過程で書き損じたか……記録に残すどこかの段階で欠落が生じたのだ。

 もうちょっと捻くれた見方をすると、伝承にあらわれるポケモンが、現代のポケモンとイコールとは限らない。「森で暮らすポケモン」は集団生活から外れて暮らす変わり者のことを指したかもしれないし、ポケモンとの結婚も、別の集落の人間と婚姻することだったのかもしれない。

はっきりとしないシンオウ関連の年代

 シンオウ地方の伝承や遺跡については「大昔」という表現はあっても、具体的な数字が出てきた覚えがないように思う(完全にうろ覚えなので、あったら教えてください)。
 作中の世界観的な理由をつけるのであれば、話し手たるシンオウの人々にとっても「どのぐらい前かはわからないが、ずっと昔の話」という認識だった、といったところだろうか。他所から人々がやって来るようになる時代には、既に信仰は廃れていたのかもしれない。

 年代に関係する情報は、制作サイドはあえてぼかしているように感じる。何故なら、他のシリーズでは具体的な年代を出している例があるからだ。ジョウト地方のアルフの遺跡は1500年以上前に出来たもの、カロスのかつての王AZが生きていたのは推定3000年前といった具合に。

 シンオウ関連の成立した時代をはっきりさせないことには意味がある。ポケモンを食べていた習慣があった頃、ポケモンと人が同じだった時期、世界創世の神話が生まれた時期……それぞれの時代や場所を明確にしないことで、より「それらしい」世界観を与えようとしているのではないだろうか。
 神話が生まれるまでのストーリーはどちらかというと史実の範疇になるし、何百年単位での話が必要になってくる。仮に構想があったとしても、ゲーム中で全ての情報を提示するのは不可能だろう。上手くやっている例もあるけど(ゼルダシリーズとか)。

 なので、ポケモンLEGENDSの時系列でも神話は既に過去のもので、プレイヤーは各地に伝わる伝承を追っていく形になると予想している。

シント遺跡

 ジョウト地方の雪山の中にある遺跡で、シンオウから移り住んだ人々が故郷を想い建てたらしい。シンオウ神話の問題児。

 みつぶたいは配布ポケモンのおまけ!終わり!!
 セレビィの時渡りやブラック(ホワイト)キュレムなど、しばしば絵空事を現実にしてしまう点は悩ましいところである。大概はリメイク等での後付け要素なので、そこまで重要度が高くないことが救いか。

 強引に解釈するならば、パルキア、ディアルガ、ギラティナ、アルセウスは根源的には同種のポケモンであり、あの場面で起きたのは繁殖だったという説だろうか。ポケモンの発生については未だ謎が多いし、合体して進化するポケモンがいるなら分裂して増えるポケモンがいてもおかしくはないだろう。

 シント遺跡自体については、アルフの遺跡とズイの遺跡が建てられた時代が近いことを示唆しているのかもしれない。シンオウの人々が移住してきたらしいが、その目的は何なのだろう。また、わざわざ雪に覆われた地に遺跡を造らなければならなかったのは、何か事情があったのだろうか。

シオンタワーが先か、ロストタワーが先か

 神話考察の本筋とはほとんど関係ないのだが、シンオウにあるロストタワーが生まれた経緯がふと気になった。古代のシンオウでは、ポケモンは骨を洗い川に送り返していたはずだ。ポケモンを食べる習慣が無くなった後、人々の死生観はどのように変化していったのであろう。
 死んだポケモンが眠る塔、というとシオンタワーと非常に似ているのだが、シオンタワーはジョウト地方に移り住んだシンオウの人々の思想が影響したのか、逆にシンオウの方が影響を受けたのか。しかしシント遺跡の推定年代(アルフの遺跡と年代が近いと考えると1500年は過去になる)を踏まえると、二つの塔は新しすぎるか。
 シオンタワーが無関係だとしても、やはりシンオウ地方の死生観の変化は気になるところではある。

 ポケモンの墓という観点でいけば、ホウエン地方のおくりび山が最も原始的ではないだろうか。ホウエンとシンオウにはレジシリーズという共通点がある。
 この二つを繋げるのなら、シンオウでポケモンを食する文化が失われた頃、ホウエンの人々がレジシリーズを連れて移り住んできた。シンオウに死んだポケモンを埋葬する文化がもたらされ、ロストタワーが生まれた……という流れだろうか。

 まあ、最も気になるのは、そもそも人のお墓はどこにあるの?という点なのだが。

2021/04/03 「はしら」の意義

 テンガン山にある遺跡「やりのはしら」。ディアルガとパルキア、もしかするとアルセウスも関わっている可能性が高い遺跡だが、これはどのような目的で造られたのだろうか。

 シンオウ各地の遺跡を確認したところ、キッサキ神殿ともどりの洞窟に柱の存在を確認できた。対してズイの遺跡、カンナギの壁画洞窟には柱が無い。柱が存在する三つの遺跡は伝説のポケモンが実際に現れる場所でもあるのだが、この共通点は偶然だろうか。

 タウンマップの情報によれば、もどりの洞窟は元来空間が捻じれているという。昔の人々は捻じれを生むのがギラティナだと考え、洞窟自体が捻じれてしまわないよう、支えるための柱を建てたのではないだろうか。
 テンガン山にディアルガ達が現れた時は空の色が変わる異変が起きた。また、「何もないところから出現した」という演出から考えると、テンガン山で遭遇した伝説ポケモンも、ギラティナと同じくシンオウ地方とは別の次元にいることになる。神話に伝えられているならば、昔の人々も伝説のポケモンを目撃していたはずだ。
 何もない空間から突如現れるという点は、ギラティナとの共通項になる。ディアルガ達にも空間を捻じれさせる力が備わっていると考え(空に起きた異変から考えると、実際にそうなのかもしれない)、テンガン山やキッサキ神殿に柱を建てたのだろう。

2021/04/03 「あかいくさり」の正体

 湖のポケモンから取り出した力を用いて作り出した「あかいくさり」は、テンガン山にディアルガ達を呼び出した。アカギは「あかいくさり」によってディアルガ達を操り世界を創りなおそうとしていたが、実際の所この道具の正体は何だろうか。

 極めて単純に考えれば湖のポケモンが持つ力、別の次元と空間を繋ぐ力ではないかというのが個人的な考えだ。ダイヤモンド・パール版ではディアルガ(パルキア)のいる次元に繋がり、プラチナではギラティナの潜む「やぶれたせかい」へと繋がった、という顛末である。
 テンガン山に伝説ポケモンが現れた時、呼応するように湖のポケモンも現れた。あの描写から推測するに、湖のポケモンとディアルガ達はともに別次元を繋ぐ力を持っており、何らかの形でお互いの力のバランスを取り合っているのではないだろうか。
 ディアルガ達の出現によって起きた異変は、湖のポケモンによって抑えられた。ギラティナ出現の時に同じようにならなかったのは、バランスを取り合う関係ではないためだろうか。「あばれもの」という像の由来はここにあるのかもしれない。

2021/04/19 アルセウスとレジギガス

 プレートに刻まれた「きょじん」ではないかという考察もあるレジギガスだが、改めて見直してみるとアルセウスとの共通点を多く持っている。ノーマルタイプで身体が白い点、三体の分身を作り出した伝承と、シンオウの創造(創世神話と国引き神話)にまつわる伝承がある点。関連遺跡がある(やりのはしら、キッサキ神殿)点も数えられるだろうか。

 レジギガスの「ギガス」はギガース(ギリシア神話の巨人)に通じる響きがあるが、巨人という点に着目すれば、日本にもダイダラボッチという巨人の伝承が残っている。ダイダラボッチ伝説は(地域によるが)山を創るなどの創造に関わるものもあるようだ。
 シンオウの伝承にはレジギガスが「たおされたきょじん」だと示す情報が無いことも鑑みると、レジギガスはシンオウ創造に関係する存在であるとしたほうが理屈が通るように思う。(伝承についてはLEGENDSで増えるかもしれない)

 シロナは古い伝承にギラティナの存在を見つけたらしいが、レジギガスの伝承とシント遺跡が切っ掛けになったのかもしれない。

2021/03/04