プレート考察(LEGENDS版)

LEGENDS版プレートの概要

 「Pokémon LEGENDS アルセウス(以下LEGENDS)」の物語を進めるうちに集まるプレート。ダイパでは八つの文章を読むことが出来たが、LEGENDSでは全てのタイプとレジェンドの全プレートに文章が刻まれており、合計で十九節の文章が存在する。
 長い時間を経た世界観の再構成も合わせて、ダイパのそれとは全く異なった解釈が出来そうだ。今回はLEGENDSにおけるプレートの内容を読み解いていく。

 連続すると思われる文章をまとめて、それぞれの解釈を行っていく。全文章一覧はポケモンWikiの該当ページを参照されたし。
 LEGENDSで追加された文章は背景に色を付けています。

宇宙のはじまり

うちゅう うまれるまえ そのもの ひとり こきゅうする
うちゅう うまれた ばしょ そのもの はじまりの ばしょ
うちゅう うまれしとき その かけら プレートとする

プレートに あたえた ちから たおした きょじんたちの ちから
プレート にぎりしもの さまざまに へんげし ちからふるう
うまれてくる ポケモン プレートの ちから わけあたえられる

そのものの ちからの かけら たまに こめて だいちに うめる

 そのもの=アルセウスの存在と、宇宙の始まりについての内容が書かれている。ここで増えたのは一節だけだが、LEGENDSの中で出て来た他の情報を合わせると、「うちゅう」はかなり広い解釈が出来るようになる。

 コギトは「宇宙とは時間と空間が合わさったもの」と語る。そして、ズイの遺跡に遺る「こころもくうかん」という言葉。これらから、人の心も広義の宇宙であると言えないだろうか。
 過去の考察でも折に触れてきたが、アルセウス達は実際に世界を創造したわけではない。プレートに刻まれた「宇宙生まれた場所(時)」は、アルセウスが他者に認識された瞬間を示しており、それゆえ「はじまり」なのだと考える。それでは、アルセウスを認識した者とは? 可能性がある人物と言えば、シンオウさま(アルセウス)に挑んだという古代の英雄だろう。

 アルセウスと英雄の出会いによって生まれた何かが、プレートに刻まれた「うちゅう」が指すものであり、プレートの元になった欠片と思われる。プレートに与えた力の元とされる「たおした きょじんたち」は、英雄が乗り越えてきた困難を比喩したものか。

 続く文章はアルセウスの特性「マルチタイプ」と、ポケモンのタイプについての言及になる。全てのポケモンは、必ずタイプを持っている。ポケモン達の火や水を使う力はプレートが与えたもの……アルセウスの特性を通じて、人はポケモンのタイプの起源がプレートにあると考えるようになったのだろう。
 物語の中で入手するプレートの多くはポケモンが持っていたが、それはプレートがポケモンにとって必要と考えていた古代の人々が、ポケモンに預けたからなのかもしれない。

 最後に新たに追加された一文、大地に埋められた「たま」とは何だろうか。LEGENDSで登場した玉といえば、ディアルガ達がフォルムチェンジする際に使う三種の玉が挙がるが、いずれも地中に埋まってはいなかった。モンスターボールのクラフトに使う「たまいし」も名前に含まれているものの、詳しい特性が明らかになっていない以上含めることは出来ない。

 見方を変えて、たまに込められたという「そのものの ちからの かけら」からアプローチしてみよう。アルセウスの力の欠片とは何だろう、と考えると、プレートにも書かれているマルチタイプを示唆すると思しき文、「さまざまに へんげし」が該当しそうだ。そうすると、大地に埋められたのはポケモンが姿を変えるための力であると言える。
 ヒスイ地方の各地に点在する鉱床からは稀に進化の石が手に入る。玉という言葉には、球体以外に宝石類も含まれる。プレートの「たま」はこれらを指していると考えられる。

 あるいは後述する解釈を踏まえると、「たま」はポケモンそのものとすることも出来る。ポケモンがどこから来るのか、何故タイプを持っているのか、何故姿を変えるのか。プレートに刻まれた創世神話は、ポケモンに関わる疑問についての解答として生まれた物語なのかもしれない。

分身達と三つの命

そのもの じかん くうかんの 2ひき ぶんしんとして よに はなつ
そのもの じかん くうかんを つなぐ 3びきの ポケモンをも うみだす
2ひきに もの 3びきに こころ いのり うませ せかい かたちづくる
3びきの ポケモンの ちから じかん くうかんを しばし とめる

 人々が時間と空間、心を認識するきっかけとなったポケモン達についての文章。ここに関しては大きく内容は変わっていない。ディアルガ達と湖のポケモン達は何らかの形でバランスを取り合っているという、カンナギタウンの壁画を示唆する情報が付け足されている。
 少し気になるのは、赤い鎖に関する言及が無い点か。「時間と空間を暫し止める」というのが該当するといえばそうなのだが、道具であることも、鎖の作り方も一切書かれていない。
 赤い鎖のことが古代シンオウ人の口伝にのみ残ったとして、プレートに刻まれなかったのはどうしてだろうか。

 別の考察でも触れたが、この文章の中の「いのり」の主語はそのもの(アルセウス)なのかもしれない。

裏側の世界

そのものの あらぶる ぶんしん せかいの うらがわを あたえられる
あらぶる ぶんしん いかりの かみなりを はなつ
せかいの うらがわ じかん くうかんの ことわり ことなる
せかいのうらがわ みだれるとき じくうのさけめ しょうじる
せかいの うらがわに みちるもの いぶく ものの すがたを かえる

 LEGENDSでまるっと追加された、ギラティナに関すると思しき文章。「あらぶる ぶんしん」がギラティナだと考えられるが、いかにして生まれたのかの経緯については書かれていない。観測されていないのか、それともまだ見ぬプレートの文章があるのだろうか。
 裏側について「時空の理が異なる」という内容は、プラチナで出て来た「やぶれたせかい」を連想させる。あるいはあの世界も、裏側と呼ばれる時空に内包される、ほんの一つに過ぎないのかもしれない。

 文章には時空の裂け目についてや、キング達が荒ぶる原因となったと思われる「カミナリ」に関しても触れられている。プレートの文章をそのまま受け取ると、「あらぶる ぶんしん」の怒りが源のようだが、古代のポエムにはまた別の解釈が書かれている。

いかづちにうたれたポケモンたちは
弱き人の力となった
いかづちはシンオウさまの
やさしき思いであろうか

(古いポエムより抜粋)

 更に別のポエムでは、キング達を「シンオウさまの光を浴びたもの」と指している。
 時空の裂け目の向こうや、アルセウスもしくはギラティナが雷を放った描写は作中には無く、結局のところ雷が何だったのかは明らかになっていない。古代に生きていた人々にも確かめる術は無かったのだろう。長い時代の中、時空の裂け目と雷に関する解釈も移ろい続けていたのだろうか。

 「世界の裏側に満ちるもの」が「息吹くものの姿を変える」というのも気になる文章である。最初は「満ちるもの=雷のエネルギー」であり、ギラティナ達のフォルムチェンジなのではないかと考えたのだが、「息吹く(呼吸する)もの」という文章は、特定の存在ではなく生命全般を指しているように思われる。
 となると、「世界の裏側に満ちるもの」がポケモンの進化を引き起こしているという意味ではないだろうか。ポケモンはアルセウスの力の欠片が込められた「たま」から生まれ、プレートによってタイプを得る。そして世界の裏側から働く力によって姿を変える(進化、フォルムチェンジ)と解釈すればおさまりが良い気がする。


進化シーンをよく見ると、雷のようなエフェクトが発生している。

 ボルトロスの化身フォルムの図鑑説明文には「大地を貫く稲妻にて土壌鍛えたり」とある。春雷とともに芽吹く草木の様子や、ポケモンの進化時に発生する雷のようなものを、時空の裂け目から生じる雷と結び付けたのかもしれない。

てんかいのふえ

そのもの プレートの ちから あつめし ふえのねいろを きく

 他のものとはいまひとつ繋がりを見出せない文章だが、意外と重要なものに思われる。物語の終盤、主人公が全てのプレートを入手すると同時に「カミナギのふえ」が「てんかいのふえ」へと変化した。つまり「プレートの力集めし笛」とは、アルセウスの宇宙に繋がる道を拓く「てんかいのふえ」に他ならない。
 どのような力を持っているのかの具体的な説明は無かったものの、その後のウォロの反応から、アルセウスに会うために必要な道具と思われる。道具欄の説明によれば「この世のものとは思えない音色」を奏でるらしく、その音でなければアルセウスに届かない、ということか。

 妄想の域を出ないが、ウォロはこの文章を読んでいたのかもしれない。文章が刻まれている「がんせきプレート」は、ウォロが心当たりがあると言って向かった険し林で入手したものだ。
 作中の描写を見る限り、ウォロは「プレートを集めればアルセウスに会える」と考えている。シシの高台などの象形文字に加え、この文章によって確信を強めたのではないだろうか(もっとも、彼は伝承に存在しない最後の鍵を見逃していたため、正解に辿り着くことは出来なかったが)。
 ウォロはどこでプレートを入手したのか、何故プレートを手放したのかなどの不可解な点もあるため、あくまで根拠の薄い推測である。

 ところで、この情報に基づくとある矛盾が発生する。プレートは「宇宙生まれし時」、つまりアルセウスと古代の英雄が対面した時に出来たはずだが、ならば「てんかいのふえ」のためのプレートはどこから来たのだろうか。
 プレートに刻まれた文章は散文的なこともあり、内容に矛盾があったとしても不思議ではない。だが、それで片づけてしまうのは面白くないのでもう少し考えていく。アルセウスがプレートを創ったのか、それともプレートは元から存在したのか? その手がかりとして、古いポエムにもプレートに関わる文章がある。

ヒスイに散らばるプレート
さまざまな力を宿したプレート
未来永劫 残るものとして 永遠の 祈り 言葉を刻む
いつまでも どこまでも 秘めた思い 広まるように

 古代シンオウ人が創ったり、アルセウスから与えられたものであるなら、一行目のような「散らばる」といった言葉は使われないのではないか。古代シンオウ人にとってもプレートは不思議な道具だったのだ。ポケモンのタイプの源と考えたのも、それが理由だろうか。
 また「未来永劫残る」という部分から、非常に頑丈なもののようだ。プレートの模倣品の痕跡が、ルビー・サファイアから登場している赤、青、緑のかけらかもしれない。

 プレートを創り出したのは何者なのか。作中に手がかりがあるとしたら、プレートに反応する扉があったキッサキ神殿だろう。キッサキ神殿を建造した文明によって、プレートも創られたのか。
 キッサキ神殿は古代シンオウ人が建造した神殿等と違い、LEGENDSからはるか未来にあたるシンオウ地方にも存在している。この点はある種プレートと共通している。
 あの神殿を建造した人々は何を想い、そして何処へ行ったのか。ある意味、古代シンオウ人の文明以上に謎に包まれていると言えるかもしれない。

アルセウスの居場所

そのもの あらゆるところに いる そのもの あらゆるところに いない
そのもの あらゆる うちゅうで ポケモンと ひとを みる

 アルセウスのいた「時間も空間も超えた宇宙」のことを指していると思われる。3月16日に配信される更新データでBDSPでもアルセウスが入手できるようになるが、これもまた「あらゆるうちゅう」に存在するアルセウスを体現する仕掛けだろうか?
 また、あらゆるところに「いない」という文も印象的である。アルセウスは普遍的に存在しているが、それを感じることが出来ない者もいる、という意味なのかもしれない(何故できないのかは、おそらく「彼」の存在が示唆しているのだろう)

 LEGENDSアルセウスはシンオウ神話の世界観に変化をもたらしたが、心が中核となっているという点は一貫しているように感じられた。15年前から変わらないテーマがしっかりと存在していることが、シンオウ神話に多くの人が魅かれる理由なのかもしれない。

2022/03/16