ホウオウとスイクン

 かのポケットモンスターの二作目の伝説ポケモンであるホウオウ。三匹のポケモンの伝説や固有の持ち物「せいなるはい」など、実に神秘的な印象を受けるポケモンです。
 その外見もあわせて、初出時の存在感は伝説ポケモンの中でも郡を抜くと思われます。
 更にマイナーチェンジとして登場したクリスタル版では金銀より詳しい設定も明かされ、ホウオウをはじめとしたジョウトの伝説ポケモン達の神秘性を更に強めました。

ホウオウと三匹のポケモン

 昔、ジョウト地方のエンジュシティに「カネのとう」という塔があったが、落雷によって燃え尽きてしまった。その時逃げ遅れた三匹のポケモンが死んでしまったが、ホウオウが舞い降り彼らを蘇らせた。
 蘇ったポケモンはライコウ、エンテイ、スイクンとなり、ジョウト地方を駆け回るようになったという。

 クリスタル版では、更にいくつかの設定が追加された。
 ホウオウが蘇らせた三匹のポケモンはそれぞれ「塔に落ちた雷」「塔を焼き尽くした炎」「炎を消した雨」を宿しているという。
 また、スイクンはホウオウに最も近い存在であり、アルフの遺跡にいるアンノーンとも何らかの関係があるとか。アンノーン自体は伝説に現れておらず、具体的にどのような関わりがあるのかの説明はされていない。

 クリスタルのデータが無いので確認できませんが、大まかな筋は上記であっているはず。
 何故スイクンが「最もホウオウに近いポケモン」であるか、そしてアンノーンとはどのような関係があるのかを考察していこうと思います。

 タイプから考えれば、最も近いのは炎タイプのエンテイでしょう。水タイプであるスイクンは、どちらかと言えば対極にありそうなものです。
 そこで、視点を変えてスイクン達が宿すという力に着目してみます。雷は炎を起こし、炎は塔を焼き尽くしました。これらは「三匹のポケモン」が命を落とす原因となったもの、言うなれば災いです。
 一方で、炎を消した水は災いを治めたものであり、前述の二つとは明らかに異なる性質を持っています。
 このように考えれば、火災で死んだポケモンを蘇らせたホウオウに最も近いのは、災いの対である水――スイクンであると言えます。
 また、炎は寒さから守るといった一面を持っていますが、エンテイは「かざんポケモン」です。火山の噴火は大規模な災害の一つとして数えられますから、エンテイの力はどちらかと言うと死や破壊に近いものと思われます。

 ホウオウが飛んだ後には虹が出来るとも言われています。虹は空気中の水分がもとで出来るものですから、雨の力を宿すスイクンの属性にも符合します。

 ライコウに関しては、エンテイとスイクンのちょうど中間に位置づけられると思われます。
 主たる属性である雷は災いに属しますが、彼は背中に雨雲を背負っているという設定があります。ライコウは、雨を降らすと同時に雷を呼ぶ、雲(空にある水)の二面性を象徴しているのではないでしょうか。

アンノーンとの関連性

 アンノーンとスイクンの関わり、それは「人と意思疎通を行うための手段」だったのではないかと推測します。

 各バージョンのポケモン図鑑では、アンノーンは「文字に似ている」「何かの意味があるらしい」といったことが強調されています。
 ここで注目すべきは、それらが人間側の視点であるという点です。アンノーンの独特な形は、人間達に何かを伝えるために進化してきた姿なのではないでしょうか。
 自分達の意思を、アンノーンを介することで人間にとって意味を持ったメッセージに変える……スイクンをはじめとした伝説のポケモン達は、そうやって人間との関係を築いていたのではないでしょうか。

 上記の仮説だけでは、説明のつかない疑問もあります。伝説のポケモン達は何故アンノーンがいるアルフの遺跡ではなく、エンジュシティにいるのかという点です。

 アルフの遺跡でラジオをつけると、謎の電波を受信することが出来ます。これはアンノーン同士が会話しているのだという推測を多く見かけます。ポケモン図鑑でも、テレパシーを用いて仲間同士で意思疎通をしているらしい、といった表記があります。
 また、謎の電波にチャンネルを合わせた状態だとアンノーンの出現率が上がります。これはアンノーンが仲間だと思い寄ってくるためという説明が公式であったそうです。(どこで見たのかは失念してしまいました……)
 ラジオでしか受信できないことから、アンノーンが発している電波(=テレパシー?)は、人が感じることは出来ないようです。

 思うに、アンノーンと会話するには、何らかの媒体が必要なのではないでしょうか。そして、その媒体こそが「塔」なのではないかと考えます。
 故に、ホウオウは塔に舞い降り、ライコウ、エンテイ、スイクンは焼けた塔にいたのでしょう。

 この予想に関しては、一つ裏づけがあります。
 アルフの遺跡を中心にジョウト地方の地図を見ると、遺跡付近にある町は三つ。キキョウシティ、コガネシティ、そしてエンジュシティ。
 これらの町に共通するものがあります。それが塔です。キキョウにはマダツボミの塔、コガネにはラジオ塔があるのです。いずれの塔も、昔から立っていたものです。
遺跡を中心とした三つの町に存在する塔。奇妙な一致だとは思いませんか?
(ラジオ塔はもともとあった古い塔を建て替えたものだそうです。この話はラジオ局長から聞けます)

 シンオウ地方にも目を向けてみると、ズイの遺跡はズイタウンに隣接するという非常に近い位置にあります。
 そして塔と言えば……そう、ロストタワーです。こちらもズイタウンのすぐ南側にあり、町・遺跡・塔が非常に密接した地理になっています。シンオウ地方はポケモンからのメッセージを受け取りやすい環境にあると言えるでしょう。

 シンオウに数多くの伝説ポケモンと、それに関連する神話が残されているのは、この立地が影響しているのかもしれません。

アンノーンと遺跡

 上記の考察を広げていくと、そもそも塔や遺跡は何故造られたのかという疑問が出てきます。
 遺跡も塔も、人間が造らなければ存在しません。最初から目的を持って造った、というのもやや強引に感じます。いずれの塔も、アンノーンと関連のある伝承は残されていないからです。
 おそらく、ポケモン達から働きかけることによって――あるいは偶然に――塔は建てられたのでしょう。
 もしかすると、それはアンノーンのしわざなのかもしれません。
 文字のような、何らかの意味を持つと言われるその姿は、人間とポケモンとの会話のために進化したからなのではないでしょうか。

 遠い昔に造られた遺跡に、どこからかやって来たアンノーンが住みつく。アンノーンの意思を感じた人間達が塔を建て、そこからポケモン達がメッセージを送る。
 シンオウやジョウトの伝説は、そうして生まれてきたのかもしれません。

再考察含めて内容を構成し直したジョウト伝説の成り立ちについての考察を作成しています。


2008/09/17