もっと想像してみる(1)カントー・ジョウト編

 これまで伝説ポケモンを中心に様々な関する考察(妄想)をしてきましたが、そこから更に広げてみようという企画。ほぼ全部妄想&続くかは謎。

中の人そこまで考えてないと思うよ>

カントー地方編

 カントー地方は他シリーズと比べて伝説ポケモンの存在感が薄いので、あまり深く掘り下げる材料が見当たらない。ファイヤーに関してのみ、グレンジムリーダーのカツラが山で遭難した時、ファイヤー(推定)の炎の明かりに助けられたという話が登場する。ここから考えると、カントーにおいては伝説ポケモンはありがたがられる存在であり、グラードンやカイオーガのように災害をもたらすような側面は少ないようだ。

 ポケモンのお墓があったり幽霊の概念があったり、タマムシシティの仏壇など、宗教観の片鱗も垣間見える。シオンタワーについてはお隣のジョウト地方との共通点と言えるだろう。
 カントー地方は近代的な町が多く見られ、ジョウト地方から生活圏を広げた人間によって発展した地方と思われる。三体の鳥ポケモンが伝説ポケモンとされているのは、そんな歴史の名残なのかもしれない。

増え続ける「ポケモン」

 赤緑から金銀へと移るまでに3年間。その時間経過によって、カントー地方には様々な変化が見られた。ポケモンタワーがラジオ塔になり、ハナダの洞窟をはじめとしたダンジョンは消滅している。
 特に大きな変化と言えるのは、生息ポケモンが増えたことだろう。野生で遭遇するのは、デルビル、ヤミカラス、マグマッグ、ヨーギラス、ニューラ、ムウマの6体。シロガネ山はジョウト地方との境目にあるため後の3匹は微妙なところだが、先の3匹はカントーの人々の生活圏に極めて近い位置に生息している。
 オーキド博士の言葉「ポケモンは150匹である」がカントー地方限定であったとして(というより、ジョウト地方に100種余りの新ポケモンがいるのでその可能性が高い)、それがたった3年で覆されてしまったことになる。このポケモン達はいったいどこから来たのだろう。

 この疑問を解消するにはマグマッグが重要な鍵となる。マグマッグはタマムシ~セキチク間を繋ぐ16~18番道路に生息しており、他の場所では見かけない。
 カントー地方に起きた大きな変化の一つに、グレン火山の噴火がある。ふたご島が崩れてしまっていること、マサラタウンに大きな被害が見られないことから、噴火の被害は主に東側に及んだとするのが妥当だろう。そして、マグマッグの生息地はグレン火山の北東にあたる。つまり赤緑の時代、マグマッグはグレン火山の火口内部にいたのではないか? 人が観測に立ち入れない場所にいたために図鑑に記録されなかったのだ。
 デルビルとヤミカラスに関しては謎のままだが、何もない所から湧いてきた…なんてことは流石に無いだろう。ジョウト地方で一部のロケット団が使用していたことから、ロケット団が他の地方から持ち込んでいたポケモン達が、解散によって放逐されたのかもしれない。

 これ以前にも、何かの出来事をきっかけに(あるいは、いつの間にか)ポケモンが増えるようなことが何度もあったのではないだろうか。シオンタウンで起きた幽霊騒ぎの正体はゴース(と、ガラガラの霊)だったわけだが、ゴースはポケモンであると確認されてから間もなかったと考えれば筋が通る。特殊な装置を使用しなければ正体を捉えることが出来ないことも、人々への認知を遅らせたのかもしれない。
 生態も多岐にわたる生物を「ポケモン」と定義するのは、さぞ多大な労力を伴ったことだろう。ポケモン界のオーソリティと呼ばれるのも納得である。

ジョウト地方編

 過去の再考察含めて内容を構成し直したジョウト伝説考察を追加しています。

前半戦(ホウオウ編)

 ジョウトといえばやはり、ホウオウとそれをとりまく三匹のポケモンだ。ジョウトの伝説ポケモンについては以前に考察しているので、今回はその周りに目を向けてみよう。

 エンジュシティにはかつて二つの塔があったが「カネのとう」は焼けてしまい、現存するのは「スズのとう」のみとなっている。二つの塔にはポケモン(明言はされないがホウオウとルギアであろう)が舞い降りていたらしいが、それには一体どのような意味があったのだろう?
 ポケモンが降りてくるのは、人にとっても意味のあることだったはずだ。ポケモンを降ろすために建てた塔であれば言うまでもなく、塔を建てた所にたまたま降りてきたとしても、そこに特別が何かが無ければ、伝説として残るとは思えないからだ。

 ホウオウの特性を思い返して関係性を見出せるのは、「飛んだ後に虹が出来る」、すなわち気象にまつわる点だ。おそらく昔は「雨乞い」あるいは「晴れ乞い」等の豊穣を祈る儀式があって、ポケモンを塔へ降ろすことがそれだったのではないだろうか。
 エンジュシティに限らず他の町にも塔があるのは、各地で同じような儀式が行われていたからなのかもしれない。コガネシティでは、ラジオ塔を建てるため古い塔を壊した時に、ポケモンの羽が見つかっている。ポケモンが降りていたのはエンジュシティの塔に限らない証拠だ。風習が薄れた現代にも、エンジュシティにだけは残ったのだろう。
 理由としては、三犬の伝説が考えられる。ホウオウの存在に、本来の儀式とは別の意味が生まれたことにより、エンジュシティの人々は彼らをより神聖なものとして扱うようになったのではないか。
 舞妓はんの華やかな着物は、袖をホウオウの翼に見立てたものと思えなくも無い。その舞によってホウオウの到来を祈ったり、あるいは自身をホウオウに見立てて行われた儀式もあったのかもしれない。

 余談だが、樹木のエンジュ(槐)は防風林として使われていたことがあるそうだ。ホウオウの体色に近い臙脂色が語源になった可能性もあるが、エンジュシティは昔は農耕が盛んな地域だったのかもしれない。南にある自然公園も実は農地の跡だったりして…。

後半戦(ルギア編)

 ルギアに関しても考えてみよう。銀バージョンではラジオ塔で「ぎんいろのはね」を入手できることから、少なくともコガネの塔にはルギアがいた可能性がある。
 塔に降りるポケモンについて、「ホウオウである」と明確に言及するテキストはほぼ無いように思う。豊穣を祈る儀式において、対象となるポケモンはホウオウに限らなかったのかもしれない。しかし、エンジュシティはホウオウと縁が深いイメージがあり、ルギアの影響はほとんど残っていないようだ。三犬の伝説によってホウオウがより重要視されるようになった影響だろうか。それ以外にも、ルギアが現れない理由が何かあるのかもしれない。

 ジョウト地方の地理を見てみると、塔がある町(キキョウシティ、エンジュシティ、コガネシティ)のうち、ルギアがいるうずまき島に最も近いのがコガネシティだ。もしかすると、ルギアはコガネの塔を経由してジョウト地方を飛び回っていたのではないだろうか。ポケモンを降ろすための塔が、ラジオ塔に代わったためにルギアが現れなくなったとすると辻褄が合う。
 そもそもルギアは「潜水ポケモン」だ。水中への適性があるぶん、飛行能力はホウオウより劣るのではないか。より遠い地へ飛行するための足がかりとして、ルギアは翼を休めるための場所…塔を必要としたのだろう。ポケモン図鑑の「嵐の夜に姿を見た」という情報は、ルギアが強風を利用して飛行していることを示しているのかもしれない。
 飛行の目的としては、他の個体と会う、別の縄張りを探すなどが挙げられるだろう。

 コガネシティの塔のみ取り壊されている点については、コガネシティは海に近いため潮風で塔が浸食され、他に比べて劣化が早かったのが原因と考えられる。
 コガネの塔がなくなったことでルギアはうずまき島周辺を主な縄張りとするようになった。その後、うずまき島周辺でルギアにまつわる言い伝えが生まれたのかもしれない。

 ジョウト地方に残る伝説はエンジュシティが中心となっているが、長い時の中で各地が影響しあった結果、今の形に落ち着いたのではないだろうか。

2021/09/05 ジョウト伝説補足

 エンジュの伝説では、ホウオウが蘇らせたポケモンがライコウ、エンテイ、スイクンになったとされているが、この三匹には別の出自が伝えられていることがポケモン図鑑からわかる。

あまぐもを せおっているので どんなときでも かみなりを だせる。かみなりとともに おちてきたという。(ライコウ)

あたらしい かざんが できるたび うまれてくると つたえられる だいちを かけめぐる ポケモン。(エンテイ)

いっしゅんで きたなく にごった みずも きよめる ちからをもつ。きたかぜの うまれかわり という。(スイクン)

 この三匹は昔からジョウト地方を走り回っており、図鑑にある伝承はジョウト地方全体に伝わっているものと思われる。エンジュでの塔火災以降、ホウオウの神格が高まるとともに、ホウオウ伝説に三匹も関連付けられたのだろう。

 ホウオウと三犬を結び付けた背景には、シンオウ神話が存在している可能性がある。HGGSのシント遺跡から、過去にジョウト地方とシンオウ地方の間には交流があったことがわかっている。
 シンオウ神話には「3」という要素が多くみられる。三つの湖とそこに住むポケモン、アルセウスが創造したとされるポケモンも三体(神話ではパルキアとディアルガだが、シント遺跡のみつぶたいからギラティナが含まれていた時期もあったことがわかる)である。レジギガスも自らに似た三体の分身を創ったという伝説がある。
 格の高い一体とそこに連なる三体のポケモンというシンオウ神話の構造が、ジョウトにも影響を与えたのかもしれない。

 それでは何故、ホウオウによって蘇ったポケモンとなったのか? それについては、ホウオウが人々にとってどのような存在であったかを考えれば、自ずと答えが見えてくる。
 先に述べたように、塔に降りてくるポケモン達は、豊穣を願うための対象であるとした。言うなれば、彼らは植物に活力を与える存在である。虹色に光り輝くホウオウは、太陽の化身と考えられた可能性もある。
 植物を育て豊穣をもたらす役割が拡大解釈された結果、ポケモンを蘇らせるという奇跡へと繋がったのだろう。


2019/06/16