アンノーンというポケモン

 ジョウトの伝説ポケモンに関する考察にて、アンノーンの存在について少し触れました。今回はアンノーンに焦点をあてていきたいと思います。

 アンノーンが生息する場所は、金銀のアルフの遺跡、FRLGのアステカ遺跡、DPのズイの遺跡の三箇所です。いずれも地名に「遺跡」がつくことから、アンノーンは遺跡に住みつく習性があるようです。
 遺跡の大本は人間が造った建造物ですから、それらが建てられた後にどこからかやって来たのでしょう。

いせき ゐ― 0 【遺跡/遺▼蹟】

(1)過去の人間の営為の跡が残されている場所。遺構・遺物のある場所。考古学では住居址・墳墓・貝塚・城郭など、土地に固定して動かすことができないものをさす。

goo辞書 国語辞典より

 では、何故アンノーンは遺跡を住処とするのでしょうか。考えてみると不思議な習性です。
 薄暗い所を好むのならば洞窟にもいてもおかしくありませんし、同じ建造物であってもグレンタウンのポケモン屋敷、ハクタイの森にある洋館といった廃墟では見かけません。
 遺跡は人間ではなくアンノーンが住むために造られたものなのでしょうか? それにしては、アンノーンに関する伝説や記録が無いのも妙な話です。

 ここでアンノーンの特徴を思い出してみましょう。ステータスはそれほど高くなく、覚える技は「めざめるパワー」のみ。進化もしないため、とても戦闘向きとは言えない能力です。しかし、前回の考察を踏まえると、これは必然的なものであると推測できます。
 アンノーンは、あの姿と能力が完成された形であり、これ以上の進化は不要なのでしょう。彼らにとって必要なのは強さではなく「人間とポケモンとの会話」を行う能力ですから。

 人間に対してメッセージを送るには、人間の近くにいるのが手っ取り早い方法です。また、人間の住居として造られたであろう遺跡は、(人間が害を加えない限り)外敵から身を守るのに適した環境と言えます。

 クリスタル版のアルフの遺跡には、アンノーンで書かれたメッセージがありました。メッセージの内容についてはこちらのページを参照してください。

 意識を察知してメッセージを送り、外敵から身を守るために外を拒む。オムナイトの部屋のメッセージは、アンノーンそのものを示しているようです。
 どうやら住居であった建物(後の遺跡)に人間がいた頃から、アンノーンはそこに住むようになったようです。ポケモンの像を作った(プテラの部屋)のは、アンノーンに外の世界のことを伝えようとしたのでしょうか。彼らがどこから来たのかを知ろうとしたのかもしれません。
 もしかすると、昔の人々はアンノーン自身から直接メッセージを受け取ることも出来たのかもしれませんね。

 気になるのは、ホウオウの部屋にあるメッセージです。アンノーンのために、人々はどこかへ旅立っていった……何故なのでしょうか。

 人間達は、アンノーンが住める場所を他の土地にも作るために旅立ったのだと思います。
 ホウオウの部屋のメッセージの内容は誰に向けられたものなのか。おそらくは人間、ポケモン、そしてアンノーン、その全てに宛てたものなのです。
 「彼らと共に歩む」そして「彼らのために旅立つ」というのは、人間とポケモンがより良い関係を築いていけるように、という願いが込められているように受け取れます。

 アンノーンと関わりあうことで、ポケモン達とも言葉を交わすことが出来る。アンノーン達を理解し、ポケモンと良い関係を築くには、ここ以外にもアンノーンと共に生きることが出来る場所が必要だ。
 きっと、アルフの遺跡にいた人々はそう考えたのでしょう。だから、彼ら――全ての人間とポケモンとアンノーン――のために旅立ったのです。名もわからぬ遠い地か、それともジョウト地方のどこかなのか、行き先を知るすべはありませんが。
 確かなのは、今もアンノーン達は遺跡の中で時を過ごしていると言うことです。

 シンボルポケモンアンノーン。彼らは最も謎に包まれたポケモンでありながら、最も人間の近くにいるポケモンなのです。

2008/09/17