ポケモンLEGENDS御三家について考える

 ダイヤモンド・パールのリメイクと同時に発表された新作「Pokemon LEGENDS アルセウス」(以下LEGENDS)。現時点の情報では、モクロー、ミジュマル、ヒノアラシが最初に選ぶポケモンであることがわかっている。
 アイヌモチーフであるという考察は既に出涸らしなので、別の方面からこの三匹のチョイスについて考えていきたいと思う。なおアイヌ神話についてはほぼ知識なしであることは予め言っておくことにする。

参考にしたところ
LEGENDS公式サイト
ガイド教本・アイヌ民族編(Good Day北海道)※PDFファイル
ネズミ(コトバンク)

アイヌモチーフ説は決定打に欠ける

 三匹はいずれもアイヌの信仰をモチーフにしているという意見は多く見るが、他の御三家も該当することについて触れているものは見かけない。そもそもアイヌは様々なものを神格化していたようで、狐、蛇、兎といった生物をはじめ、植物の神もいるらしい。「アイヌならばヒノアラシ(鼠)よりもフォッコ(狐)の方が相応しいのでは?」という疑問についても、触れている考察は見つけられなかった。

 アイヌにおいて狐は「ケマコシネカムイ(脚の軽い神)」という呼び名があり、「狐のチャンケ」という伝承も残っている。鼠については神に対する悪口を言ったものを懲らしめる役割があり、大事にすることで災いを避けるという情報は見られたが、狐のようなカムイ(神)の付く呼び名は見つからなかった。(ちなみに、増えすぎた鼠を減らすために作られたのが猫らしい)
 最終進化系のバクフーンが「かざんポケモン」なので火山信仰にちなんでいるという考察もあるが、他の二匹に比べて急に回りくどくなる理由が不明だし、火山信仰についてはヒードランでよいのではないか。カムイの呼び名がある狐や兎をおいて鼠を採用するには、いずれも根拠としては弱いと思う。

 そもそも本作はシリーズのメインストリームではないのだから、不思議のダンジョンのように全ての御三家から選べる方式でも問題ないはずだ(制作リソースの問題は別として)。

結局理由は何なのさ

 御三家の選出については、それぞれの出身地方が関係あると睨んでいる。はじめに地方で候補を限定し、その中からシンオウ(あるいは現実の北海道)にいても違和感のないポケモンが選ばれたのではないか。御三家について、公式サイトには「とある博士がさまざまな地方で出会った」とあり、この博士はシンオウ地方の伝承を調べるために三つの地方を旅したのだと推察できる。ヒノアラシのジョウト地方、ミジュマルのイッシュ地方、モクローのアローラ地方。これら三つの地方は、実はシンオウの伝承と少なからず関わりが見られるのだ。

 ジョウト地方はシント遺跡の存在からシンオウとの交流があった可能性がある。また、リメイク作品を除いて野生のアンノーンが出現するという共通項もある。
 イッシュ地方はレシラム、ゼクロムを中心とした建国伝説が存在する。この伝説はおそらくベースに創世神話がある(過去の考察参照)ので、シンオウ神話を読み解くヒントがあると考えたのだろう。
 アローラ地方には現在進行形で「守り神」と崇められているカプ達がいる。また異次元に繋がるウルトラホールの存在も、シンオウの影にある「やぶれたせかい」と類似している。

 三つの地方の共通点を挙げたが、選ばれなかった他の地方についても見てみよう。カントー地方はシオンタワーに類似点を見出せるが、塔に関してはジョウトも同様であるし、ジョウト地方と隣接しているので優先度は下がる。
 ホウエン地方はレジシリーズの存在が挙げられる。しかし彼らは遺跡に封印されており、人々に存在を認知されていたのかという問題がある(シンオウ側のレジシリーズにも言えることだが)。
 カロス地方はゼルネアスとイベルタルの生命のサイクルあたりだろうか。またこの二体について具体的な伝説の情報が無いため、伝承という観点では目立った関連性は見当たらない。
 ガラル地方はザシアン(剣のポケモン=トバリ神話の「つるぎ」)とダイマックス(=巨人)と要素だけ拾えば関連がありそうだが、シンオウの「きょじん」は各地に散らばっていたプレートに刻まれていた単語であり、認知されていない可能性が高い。剣に関しても、ポケモンに関わることが判明したのは剣盾のストーリー中でのことで、それ以前は剣とポケモンは結び付いてはいなかった。
 ……というわけで、先に述べた三か所に比べると、残りの地方は強い関連性を見出せなかったと考えて良いだろう。

 振り返ってみれば、シリーズに登場する博士はいずれも特定の研究をしている人物である。本作の博士は、シンオウ地方の(あるいは世界中の)ポケモンにまつわる伝説について研究しているのではないか。

  • ジョウト:チコリータ/ワニノコ/ヒノアラシ
  • イッシュ:ツタージャ/ミジュマル/ポカブ
  • アローラ:モクロー/アシマリ/ニャビー

 地方によって、選択肢は上記の九匹にまで絞られる。正確な過程はさすがにわからないが、ここに北海道のイメージなどを加味して三匹を選んだのだろう。
 ワニノコ、アシマリ、ポカブはモチーフの動物が北海道に生息していないため、必然的に優先度が落ちるだろう。加えて、ワニとアシカは温暖な地域に生息する生物のため、寒冷地方のシンオウにはそぐわないだろう。水タイプに関してはほぼミジュマルに絞られると言って良い。必然的にイッシュとアローラは炎タイプと草タイプとなり、「ヒノアラシ/ミジュマル/モクロー」または「チコリータ/ミジュマル/ニャビー」の二択になる。
 解答からの逆算だが、LEGENDS御三家の選出の理由を考えるならば、このようになるのではないかと思う。

結論

 ヒノアラシはかわいい。

2021/03/17