レジギガスと国引き神話

 レジギガスにまつわる国引き神話についてのプチ電波。

 リメイク前の考察まとめはシンオウ考察のまとめページ、リメイク&LEGENDSアルセウスはトップページからご覧ください。

鍵はハードマウンテン?

なわで しばった たいりくを ひっぱって うごかしたという でんせつが のこされている。

 キッサキ神殿の奥にいるレジギガスは、いわゆる国引き神話の伝承が伝えられている。この伝説が生まれた経緯には、ハードマウンテンの存在が関わっているのかもしれない。

 活火山のハードマウンテンを擁するバトルゾーンは、噴火によって生まれた島であると思われる。
 この島はシンオウ地方の北東、キッサキの東側に位置している。陸地が広がっていく島を地上から見たら、どのように映るか。海の向こうの陸地が大きくなっている様子は、「近づいてきている」ように見えるのではないだろうか。


シンオウ地方の全体マップ(公式サイトより
位置関係はリメイク前ともほとんど変わらないのでリメイク版を採用した。

 地図を見ると、バトルゾーンの島はキッサキよりはシンオウ東部に近い位置にある。島が出来た当初はハートマウンテンのある北側が島の中心だったはずだが、それでもキッサキ・ハードマウンテン間との距離と同じぐらいといったところだろう。
 シンオウ東部ではキッサキと同じような国引き伝説は生まれなかったのだろうか? これに関しては、トバリ神話考察でも述べたように、シンオウ東部が空白地帯であったことが関わっているのかもしれない。

 キッサキとシンオウ東部の気候の違いも関係していそうだ。キッサキは降雪によって海上の視界が悪い日が多いのではないかと考えられる。対するシンオウ東部は、キッサキに比べて見える頻度は多いだろう。ハードマウンテンが常に見えていることで変化に気付きにくくなり、注目されなかったのかもしれない。

所変われば神話も変わる

 それでは、シンオウ東部でバトルゾーンの形成が目撃されていたとしたら? その解になりそうな伝承が一つ存在する。湖のポケモンにまつわると思しき「シンオウのしんわ」だ。

「シンオウの しんわ」

3びきの ポケモンが いた
いきを とめたまま みずうみを ふかく ふかく もぐり
くるしいのに ふかく ふかく もぐり
みずうみの そこから だいじなものを とってくる
それが だいちを つくるための ちからと なっている という

 シンオウ地方全景からはそれぞれの街の海抜は判別できない。ただ、トバリシティは岩山を切り崩した街、カンナギタウンはテンガン山近くにあることから、どちらも海抜は高い方ではないかと考えられる。対するキッサキシティはすぐそばに港があり、海面も近い。トバリより高地ではないと考えて良いだろう。


キッサキ港。街中に段差はあるものの、海面と陸地の差があまり無い。

 キッサキとシンオウ東から、火山噴火によるハードマウンテンとバトルゾーンの誕生を観測した場合どうなるか。先に述べたように、海面に近く(気候にもよるが)視界が悪いキッサキでは、島は突如現れ近づいてきているように見えただろう。
 カンナギやトバリのような海を見下ろす場所からであれば、海の中から浮かび上がって来る火山を見ることが出来たはずだ。さながら、何者かが水底から持って来たように見えたのではないか。
 シンオウ東の人々は水=湖に住むポケモンを、キッサキの人々はレジギガスを結び付け、それぞれの伝承を創った可能性が考えられる。

 ポケモン世界の各地方には様々な伝説が伝えられている。土地が変われば、神話の類型も変わるものだが、それは同じ地方の中でも起きているのかもしれない。

創造の巨人

 考察の切れ端でも少し触れたが、日本各地にはダイダラボッチ等の巨人伝説が残っている。ウィキペディアのページを参考にすると、創造に関する巨人伝説はいくつかのパターンがある。

  1. 山を創ったとするもの。土を持って山を創り、土を取った後の窪地が湖となったとされる。
  2. 巨人が山を持ち上げ運んだ話。山創造の変化形と思われる。失敗談になっている話もいくつかある。
  3. 湖の由来に関するもの。巨人の手形あるいは足跡が湖になった。

 シンオウ地方で山といえばテンガン山、湖と言えば三つの湖。この二つに巨人伝説が関わって来るのは興味深いところだ。
 時代を遡れば、レジギガスがテンガン山や湖を創造した昔話があった可能性もある。キッサキの国引き神話は、そういった伝承の存在を示唆しているのかもしれない。

2021/10/02