ヒスイ遺跡探訪~純白の凍土~

前回(黒曜の原野)

凍土に埋もれた歴史

 前回から続けて「Pokémon LEGENDS アルセウス(以下LEGENDS)」のヒスイ地方を巡ります。今回は北部に位置する純白の凍土。雪と氷に覆われた大地には、どのような遺跡が眠っているのでしょうか。


北の果てにそびえるキッサキ神殿など、ここも気になる遺跡が点在する土地。

 この地域は、LEGENDSの時代とダイヤモンド・パール(以下ダイパ)の時代を比べると、地形が大きく変わっているようです。
 ダイパにおける216~217番道路とキッサキシティ周辺が対応するはずですが、この辺りの地形は純白の凍土に比べて平坦に見えます。特にエイチ湖やキッサキ神殿周辺がわかりやすく、湖から流れる滝は後の時代には失われています。神殿周りの地面が沈んだとは考えにくいので、凍土中央の窪地が雪などで埋まったのがダイパ時代の地形とするのが妥当でしょう。

 LEGENDSの時代から更に昔はどうだったのでしょうか? 凍土の中央にあるクレベース氷塊はかなり巨大な氷で、雪が自然に積もったものには見えません。
 純白の凍土には、氷で出来た洞窟が張り巡らされています。おそらくクレベース氷塊も地下で形成されたもので、何らかのきっかけで地上に露出したのではないかと考えます。とすると、昔は地面は高いところにあったのかもしれません。純白の凍土は凍ったり解けたりを繰り返している土地のようです。


クレベース氷塊。近づいて見るとその巨大さがよくわかる。

 冬籠りの洞穴に壁画が残っていることから、少なくとも南西部は古代シンオウの時代とさほど変わらないようです。古代シンオウ~LEGENDSの時代は凍土が少ない時期だったのでしょう。
 昔は天冠山にいたとも言われているヒードランですが、LEGENDSでは火吹き島、ダイパになると更に北のハードマウンテンに移動しています。熱源を追ってヒードランが移動しているのか、あるいはヒードランが移動することで熱源も動いているのか。どちらなのかはわかりませんが、凍土の周期には地下の熱源も影響していそうです。


純白の凍土の地形変化の想像図。ダイパの時代にはほとんど氷雪に埋もれてしまったと見られる。

 エイチ湖や心形岩山の辺りから入って来る水は、地下にある氷の洞窟とは別の場所に流れ込んでいるようです。見えない地下水脈が凍るなどして塞がったことで、凍土の中央部は埋もれたのでしょうか。

失われた?遺跡

 サブクエストの一つ「里の跡を探して」にて、純白の凍土には過去に集落があったことが仄めかされます。日記を持ったユキメノコが現れたのは西側の「戦場への道」付近なので、この辺りに集落があったのでしょうか。紅蓮の湿地のような遺跡が無いのは、住居が石造りでは無かったために風化で消滅したか、あるいは地下に沈んでしまっていると思われます。

 この地にはもう一か所、遺跡があったかもしれない場所があります。
 北東の心形岩山のそばにはオヤブン個体のサーナイトが生息しています。他にラルトス系が出現するのは、同じく凍土のキッサキ神殿内部と「紅蓮の湿地」の遺跡付近。ラルトス系は遺跡周辺にいることから、心形岩山の辺りにもかつて遺跡があった可能性があります。
 心形岩山はユクシーの形をしている、という考察がツイッターにありましたが、もしかするとユクシーに関係する遺跡があったのでしょうか。


心形岩山の近くに棲むオヤブンサーナイト。近くではキルリアを見かけることも。

謎のキッサキ神殿

 純白の凍土で最も目立つ遺跡と言えばキッサキ神殿でしょう。大きな建造物ではありますが、いつからあるのか、何故建てられたのかといった情報はLEGENDSでも一切出て来ず、謎に包まれた遺跡でもあります。
 LEGENDSのキッサキ神殿には、ダイパ時代では見られないレジギガスを象ったような地上階が存在しています。単にデザイン変更がされたのか、それとも何かの理由で無くなってしまったのでしょうか。


北の果てにそびえるキッサキ神殿。他の遺跡とは一線を画した雰囲気を感じる。

 シンオウ神殿をはじめとした天冠の山麓、紅蓮の湿地周辺の遺跡は古代シンオウ人が建てたのでしょうが、キッサキ神殿は別の文明によるものの可能性が高いと考えます。他の遺跡には見られない仕掛けが施されていたり、ヒスイの伝承には現れないレジギガス(達)との関連性など、古代シンオウ人とは別の文明を持つ人々が建造した可能性を示唆しています。アルセウス信仰が天に向いているのに対してレジギガスは神殿の「地下」にいるのも、また異なる信仰があったことを窺わせます。
 地下の扉の向こうにいたレジギガスは、ホウエン地方の遺跡にある「扉を開けよ、そこに永遠のポケモンがいる」という文章と一致しています。キッサキ神殿を建てた人々がホウエン地方へと移動し、レジロック達が封じられた遺跡を造ったのでしょうか。


LEGENDSの時代には既にあったレジギガスの伝承。セキも祖先の誰かから聞いたのだろうか。

 レジギガスは神殿地下の扉の奥に長らくいたようですが、象形文字などから存在自体は昔の人々にも認識されていたとわかります。しかし、地下の扉は「何をしても開かない」とも言われています。それにも関わらず扉の向こうにいる存在についての情報が残っているのは、考えてみると不思議です。
 古代シンオウの時代に扉は一度開いていると考えられます。再び扉を閉ざした方法はわかりませんが、プレートや古代の英雄が関わったのかもしれません。その後レジギガスの力強さを目撃した人々によって国引き伝説が生まれ、それがLEGENDSの時代にまで受け継がれてきたのでしょう。

 レジギガスが引っ張ったとされる「南の大地」ですが、ヒスイ地方の中にあるとすればイチョウの浜辺と火吹き島ではないでしょうか。
 ダイダラボッチなどの巨人が山を創った伝承は日本各地にありますが、「山をつくるために土をとった窪みが湖になった」など、形が似ている二つの場所を結び付けるパターンが数多く存在します。レジギガスにまつわる話も、この類型だと考えられます。

 キッサキ神殿はいつ建てられたのか。LEGENDSの時代にはまだ無いハードマウンテンは、どのような変遷を経て出来たのか。純白の凍土はまだまだ気になる謎が溢れていますが、長くなりそうなので別の機会にしたいと思います。

2022/04/18