もっと考えてみる(4)~イッシュ編(前)~

フォルムチェンジについて考える

 BW2では、キュレムの新たな姿が登場した。というわけで、まずはキュレムに関する情報からまとめていくことにする。

 キュレムは「いでんしのくさび」という道具を使用することでフォルムチェンジが可能だ。レシラムを吸収するとホワイトキュレム、ゼクロムを吸収するとブラックキュレムへと変化する。
 伝説によると、ある一体のドラゴンがレシラムとゼクロムに分裂した際に残った抜け殻がキュレムらしい。キュレムが二体のドラゴンを取り込んだフォルムがあるのでは?といった予想も見られた。
 ただ、この伝説が事実であるかどうかや、未知のフォルムの存在については少し疑問がある。というのも、レシラムとゼクロムを同時に吸収することは出来ないように思われるためだ。

 ゲーム中のイベントでは、キュレムはNが連れていたレシラム(ゼクロム)を吸収することでフォルムチェンジを果たしていた。背中に生えた器官から放つ光線(触手のように実体があるのかもしれない)で捕らえていたが、左右にある触手の両方を使用していた。ドラゴン一体を捉えるのに両方を使用するということは、同時に吸収することは出来ない、あるいは想定されていないようだ。
 また、フォルムチェンジ後の姿では、この器官は尾に繋がっている状態で、先述の吸収能力は使えないように見える。フォルムチェンジ後にさらに残りのドラゴンを取り込む、といったことは出来ないのではないだろうか。


ポケモンHOMEのモデルによる、フォルムチェンジ前後の比較。
吸収に使用した器官は、尻尾が発生させるエネルギーを巡らせる器官に変わっているように見える。

 剣盾の図鑑で追加された情報だが、キュレムはレシラムやゼクロムと同じ遺伝子を持っているらしい。BW2の時点で「いでんしのくさび」があることから、設定自体は元から存在していたようだ。この特徴により、キュレムのフォルムチェンジが可能なのだろう。
 遺伝子が同じであれば、レシラムやゼクロムにも同様の能力が備わっていそうなものだが、現時点で判明しているのはキュレムがベースになる姿だけだ。キュレムのみ吸収能力を持っているとすると、それは何故なのだろうか?

キュレム、火山の中に住んでいた説

 隕石が落下した跡と言われるジャイアントホールにいることから、キュレムは隕石と関係があるのではないかとも言われている。が、ここでは火山の中にいた可能性を提示してみたい。

 キュレムの生態について、ポケモン図鑑の説明をもとにまとめてみる。

  1. 冷凍エネルギーを生み出すことが出来るが、それによって身体が凍っている(ブラック他)
  2. レシラム、ゼクロム以上の力を持っているが、極低温により封じられている(ソード)
  3. 細胞組織を安定させるため自身を凍り付かせている(シールド)

 これらの情報から、キュレムのやや歪な性質が読み取れる。キュレムは冷凍エネルギーを生み出せるが、その冷気で自らが凍ってしまうため、力を十分に発揮することが出来ない。その一方で、自らの体を極低温にしなければ細胞が安定しないという。この相反する性質については、フォルムチェンジが疑問の答えになる。

 イッシュ地方(というより地上)はキュレムが活動するには適さない気温なのだろう。キュレムに最適なのは高温状態であり、レシラムやゼクロムを取り込み体温を上げることで、本来の力を発揮できるようになる。
 レシラムやゼクロムは尻尾から炎や電気エネルギーを作り出せるようだが、何故キュレムは熱ではなく冷気を生み出すのか。それは、周りが常に高温だったため、熱を生み出す必要が無かったからと考えられる。


キュレムの生態。地上の気温は活動に適さないと思われる。

 過去のイッシュではかつて火山の大噴火が起きた説を挙げたが、BW2のイッシュ地方にはリバースマウンテンが追加されている。まさに先に述べたキュレムが生きるのに最適な環境といえるだろう。
 バージョン間で状況が異なるが、ホワイト2の説明によれば「大昔に大きな噴火をした」という。火山の中にいたキュレムは、噴火か何かしらの原因(現代ではヒードランがいるので、その影響も考えられる)によって外に追いやられ、そのまま戻れなくなってしまった。
 外の気温では活動出来ないキュレムは、冷凍エネルギーで自らを凍らせ、細胞を安定させなくてはならなくなった。また、熱エネルギーの源として、レシラムやゼクロムを取り込む能力を発現させた……という経緯があったのではないか。
 BW2のイベントでは、この三匹の間にはテレパシー能力のようなものがあることを示唆する描写(Nが従えたドラゴンが、キュレムが苦しんでいることを感知している)がある。キュレムのフォルムチェンジは、キュレムを助けようとするレシラムやゼクロムの意志も影響した結果なのかもしれない。

 大噴火がレシラムとゼクロムの怒りに結び付けられたのは、二匹のポケモンが火山の周辺にいたからとも考えられる。
 もともと火山帯に生息していたポケモンが、火山内部とそれ以外の環境にそれぞれ適応し分化したのが、イッシュ地方の伝説のドラゴンなのだろう。

 レシラム、ゼクロムと同じように、キュレムにも火山との関連性を見出せた。それを踏まえて、後半ではイッシュ伝説に関する追加考察を行いたいと思う。

2021/11/01